2011年07月01日
Translator's afterword

=筆者インタビューを含む=
訳者あとがき
訳者あとがき
西元啓子
エハンさん、いや、J.C.ガブリエルさんより執筆中の『タイムゲート』のアウトラインを最初に聞いたときに、“大人のためのハリー・ポッター”のような、もしくは、“インディー・ジョーンズ”みたいな物語だなと思った。
魔法あり、タイムトラベルあり、異次元への旅ありといった神秘的な部分に、世界を旅する冒険物語の要素ありと、子供の頃に読んだSFファンタジーの世界が満載でありながら、“大人の”とするのは、スピリチュアルな観点から見た性エネルギーについて触れている点、そして、ヤクザという裏社会を生きてきた人間の生き様が見えるハードボイルドな部分に加え、変性意識の扉を開くハーブ、アヤワスカが連れて行く地獄と天国の世界などは、やはりこの小説が大人のためのものであることを示しているといえるだろう。
けれども、その読者ターゲットは、決してスピリチュアル好きの人に限ったものではない。
この小説は、2012年のその日に向けて、タイムゲートの扉の向こうへ旅立つために謎解きをしながら、旅を続けるガブリエルとその一行の物語であるが、2012年からの新しい時代を生きるためのヒントが詰った本でもある。
スピリチュアルと呼ばれる世界になじみのある人なら、「2012年問題」については、少なくともこのトピックに関しては、各論が交わされていることも知っているだろうし、すでに、自分なりの見解を持って意識改革に取り組んでいる人もいるだろう。もしかして、実際に具体的に何らかの準備をはじめている人もいるかもしれない。
けれども、スピリチュアルに興味がない人、もしくは、まったく2012年問題について意識を向けたことがない人はどうだろう。彼らは、このまま、この問題にまったく触れずに、今後の激動の時代にまっさらの状態で突入していくのだろうか?
実はそんな、いわばスピリチュアルにあまり興味のない人々にこそ、この小説を読んでもらいたい、というのが筆者の狙いでもあった。なぜならば、地球の住人たちは、スピリチュアルに興味があろうとなかろうと、全員が2012年とそれ以降の世界を一人ひとりの“魂の成長の度合い”で受け止め、体験し、変容し、自らが選んだ現実にむけて旅立つことになるからだ。
この小説を書いたきっかけについて、ガブリエル氏はこう語っている。
「今まで2012年について研究してきて得たすべての情報を、難しいサイエンスではなく、1つの物語として面白く、わかりやすい形で提供したいと思いました。宇宙のこと、多次元・異次元のこと、そして、そこに住む人類以外の生命体の存在のことなどは、新しい時代を生き抜くために理解しておくべき重要な要素です。さらに、これは私が実際に体験したユニークなイベントがストーリーの根本にあるのですが、それは、ドキュメンタリーとするには、あまりにも信じられないような事実が基になっているので、ノンフィクションでありながら、フィクションとして提供せざるを得ないと思ったのです」
そこで、ガブリエル氏は、この小説を名付けて“ファクション(ファクト;事実を元にした小説)”とした。
見えない世界のことは、スピリチュアル好きの人はともかく、信じる、信じない、の前にアレルギー的に苦手として避けている人々もいる。
特に、スピリチュアルの事象をリサーチやデータに基づき、よりサイエンスとして捉えているガブリエル氏だからこそ、そんな人々に向けて、この奇想天外なストーリーをドキュメンタリーとして伝えるわけにはいかなかったのだ。信じがたい内容だからこそ、広く一般の人に伝えるには、“ファクション”という手法をとることがベストだったというわけだ。
ちなみに、私も最初はある程度、この小説には事実が織り込まれているというのは知っていたのだが、その実際の“ファクトぶり”を聞いたときには、さすがに驚いてしまった。
小説中には、虹虎と天ノ山という元ヤクザの幹部たちが登場人物として出てくるが、ガブリエル氏のもとに、あるヤクザの幹部から2012年の映画を撮りたいと連絡が入ったのは事実だそうだ。そこまでなら、なんとなくまだわかるのだが、さらに、そんなヤクザたちが、実際に地下シェルターの建設を進めているなど、来るべき新しい時代への準備をしていることまでもが事実らしいのだ。
「数年前、ある不思議なグループを組織した人物から、2012年をテーマにしてドキュメンタリー映画を撮って欲しいという依頼を受けたのは事実です。残念ながら、このプロジェクトは結果的に実りませんでしたが、この機会は、私にとって、いわゆる普通の日本人がアクセスできないような世界を垣間見るきっかけにもなったのです。何しろ、一見、裏社会で生きているとも思われるような人々が、実際には、それこそ裏の世界で、すでに地下シェルターのようなものも準備しはじめていたり、宇宙の存在たちとも交流をはじめていたりするのです。
彼らは、異次元の世界や2012年への理解や知識も大変深く、彼らなりに、2012年以降の新世界秩序を創ろうとしていました。もちろん、私個人としては、国粋主義者的な考えに傾きがちな彼らの意見すべてに賛同しているわけではありません。けれども、資金力を持ち、色々な意味で世の中に影響を与えることのできる彼らが、元来、日本人が持っていた良さである協調性や調和を大事にしながら、平和を基調とする新しい世界を創ろうとしている計画を知ったのは驚きでしたし、素晴らしいとも思いました」
小説中では、かつては極道の世界を生きた男、天ノ山が、現在は平和活動家として、天皇を中心とするワンワールドを目指しているという発言がある。
また、天ノ山に加えて、幼い頃に親との別れを体験し、究極のサバイバル人生を送ってきたカリスマ性を持つヤクザ、虹虎の存在も同様である。一見、暴力的な闇のボスともいえるこの二人が、日本人としての高い精神性を持ちながら、時には、ガブリエルやメアリーが舌を巻くほどの歴史~経済~スピリチュアルまでの幅広い知識を持ちあわせる彼らのキャラクターとは、実際の人物観察がベースになっているのだろう。
さらに、主人公のガブリエルは、まさに日本で30年過ごしたガブリエル氏自身がモチーフになっているのは誰もがお気づきになると思うが、日本人のマインドを主観的にも、客観的にも理解することができるガブリエル氏にとって“日本人である”、ということは、私たち日本人が自分たちでは気づかないものの、それだけで大きな意味を持っているようだ。
「戦後、日本人はほんの短い時間で、焼け野原のゼロの状態から、とてつもない先進国にまで国を再建してきました。さらに、軍国主義一色だった体制から民主主義へのシフトも素早かった。これは、日本人の素直さ、協調性、教育レベルetc.すべてを含む日本人の高い潜在能力がそうさせたのです。今回の大震災の後の対応を見ても、日本人の精神性を世界が賞賛していたのも1つの例といえるでしょう。アセンションと呼ばれる言葉を“新しい生き方”という意味で捉えるならば、日本人こそが、それを可能にできる人々でもあるのです。挨拶しあう、協力しあう、相手を思いやる、そんなシンプルで簡単なことが海外では個人レベルでできても、集団のレベルで出来なかったりする。世界各地でアセンションの準備を進めているグループは幾つもありますが、国レベルで準備できる国があるならば、それは日本であり、日本人たちだといえるでしょう」
小説の中では、そんな日本が戦後、ショッピング大国となり、“プチ・アメリカ”のようになってしまったと虹虎が嘆いているが、きっとそれは、ガブリエル氏自身の憂いでもあるのだ。すっかり忘れてしまった大和魂のスピリットを、今、私たち日本人たちが、ガブリエル氏によって思い出させてもらっているのかもしれない。
このように、小説の登場人物たちの発言は、ガブリエル氏の思いが各人のキャラクターを通して吐露されている。
あるときは、シャーマン、ドン・イグナチオとなり、あるときは、日本人の天ノ山や虹虎、そしてあるときは、錬金術師のカスタネダやサンジェルマン、そしてサイキックのメアリーと七変化しながら、ガブリエル氏は小説中で、日本人たちに訴えかけている。
そういう意味においては、この小説は、どちらかというと物語の流れをマクロに辿る、つまりストーリーの展開を楽しむものというよりも、こうした登場人物たちのミクロな会話や発言にこそ意味があり、そこに注目するものではないのか、ということに翻訳しながら気づいた。
実際にこの物語は、タイムラインに沿って流れていない。プロローグがストーリーの流れでは最終章にあたるなど、各章がそれぞれ読者を惑わすかのように順不同に入れ替わっており、“時間の軸はあってないもの”、というのがまさにギミック化されたものとなっている。
これこそが、「時間は、まぼろしなんだよ」というガブリエル氏からのメッセージではないだろうか?
さて、この物語のもうもう1つ大きいファクトの部分はイタリアの地下神殿の部分だ。スピリチュアル事情に詳しい人なら、イタリア北部に現実に存在するコミュニティ、「ダマヌール」を思い浮かべる人も多いだろう。
実際にダマヌールでは、地球のエネルギーの流れであるシンクロニックラインが交差する場所の地下70メートルの場所に神殿が造られており、各種セラピーや実験を通して、宇宙とのコンタクトなども進められているという。
物語では、フィクション部分として、中世から生き続けている錬金術師たちが地下神殿のタイムキャビンで儀式を行うが、この“儀式”という概念は、ガブリエル氏の中で、2012年問題を語る上でも重要な役割を果たしている。
「現代人はすっかり忘れてしまっていますが、古代から世界中の至る場所で、人間は自然に対して、目に見えない偉大なる存在に対して、畏敬の念を払い、儀式というものを行なってきました。儀式の中で、祈りや瞑想を通して、人間が意識を集中させたときに生まれるパワーには計り知れないものがあるのです。このままのタイムラインが進めば、2012年のイベントは破壊的なものかもしれない。けれども、多くの人々がこの時期を進化のタイミングだと意識して、心を合わせて儀式を行えば、違う未来も可能かもしれないのです。
この動きは、すでに宇宙へのゲートを開いたといわれた、1987年の地球規模のイベント、ハーモニックコンバージェンスからはじまっていますが、今からさらに多くの人々が共に目覚めることで次元の要素が変化するかもしれません。それほど人間の意識、想像力のパワーは偉大なのです。2012年のイベントとは、人間の意識の中で行なうものなのです」
当然ながら、ガブリエル氏のいう儀式とは、私たちが自分たちのエゴのためにだけ、神社に行って参拝をすることとは全く違うものである。小説の中に何度も出てくる、2012年の鍵である“進化”のために人類が心を揃えて真剣に行うものなのだ。
では、その儀式をすると、未来はどのように変わるのだろうか?
「意識のフィールドが変わると、外の世界の現実が変わります。例えば、同じ地球にいながらも、テレポーテーションをしたかのように、自分の時空を変えることができるのです。極端にいえば、この世はすべて幻。良い事も、悪いことも、人間のイマジネーションが作り上げているのです。そして、祈りのパワーは、神のパワーと融合することで天国にもなりますが、その逆もまた、ありえるのです。
2012年に関しても、全員が全員、全く同じ結果になるわけではない。その時が来れば、外の世界が変わっている人と、そうでない人の大きな差が出ているのではないでしょうか。私たちのハートは、この次元以外に存在しているのだ、いうことに気づけば、奇跡だって起こせるはずなのです」
アセンションという言葉の定義において、今までの古いシステムの地球と新しい地球の二つに分かれる、と表現するスピリチュアリストもいるが、ガブリエル氏の意見もそれに近いものがあるのかもしれない。
ちなみに小説中では、コイヨリッティの祭りの場において、6万人が3日間祈り続けることで、とてつもないエネルギーが生まれ、一行は精霊のエネルギーに遭遇することとなるが、実際に、ガブリエル氏はこれをリアルに体験したそうだ。
もし、こういったことが可能ならば、地球に届く高まりつつエネルギーを人類全体の祈りの力で使えるのではないだろうか、ということも現実味を帯びてくる。
最後に、この小説はミクロな会話の中に意味がある、としながらも、もしファクションであるならば、この小説がその後どうなるのかは、読者として知りたいところでもある。
例えば、現実的にも建設中であるという、小説中に何度も出てくる日本の地下シェルターの話は?そして何より、日本人、また全地球人たちは無事に2012年を乗り越えられるのだろうか?
ガブリエル氏いわく、この続きは、現在執筆中とのこと。
今後の大きなあらすじのポイントとしては、イタリアの地下神殿が西洋の中心ポイントなら、東洋の中心地点が日本の地下シェルターということになる。この地球における2つの東西のポイントで同時に儀式を行うことが、破壊に向けてフルスピードで向う、この世界の現実を変えられる鍵になるだろう、とのこと。地球が新しい次元への移行できるかどうか、それは次の小説で答えが出ているはずだ。そして、移行したとしたら、その先はどうなっているのだろうか?
それにしても、まったく、この物語はファクションだからやっかいでもある。
なぜならば、SFのようであって、リアルでもあるからだ。そして、そのタイミングは、もうすぐそこに来ている。もはや、私たちが暮らすこの現実の世界では、古い世界が音をたてて崩れ始めている。もう、古い世界にしがみついていては、新たな世界へのテレポーテーションは行なえないのだろう。
ガブリエル氏いわく、このマージナルポイントを通過するために、“左脳的な知識と情報”が必要だという。
ふわふわしたファンシーなスピリチュアルではダメであり、民俗学、歴史、宗教学、天文学、人類学、物理学etc.これらを短期間で一気に勉強し“理解”することが必要になってくる。
そこへ行くには、怪しい霊能力ではなく、受験勉強のような日々が必要になる、というのもまた面白い。
そのためには、大手メディアの画一的な報道から離れ、時間の使い方を変え、自分の内面を見つめなおすなど、生き方までを変えなければならないだろう。何しろ、私たちにすっかり染み付いてしまった既成概念を一掃しなければ、新しい場所へは行けないのだ。
でも、そんなに沢山のことを学ぶなんて、どこから取り組めばいいのだろう?そんな人たちにこそ、まずは『タイムゲート』が、その入り口に立つためのツールになって欲しい。
多くの人が目覚め、気づくことで、たぶん、この物語の続篇も変わってくるはずだ。なぜならば、これは、ファクションだから。そして、それをハーグ・ダナールのように後ろから指揮しているのは、実は、ガブリエル氏自身なのかもしれない。
Posted by エハン at 12:00
│Timegate