2007年06月29日

ご両親のために歩く男

宿風景
           典型的なお遍路の宿風景


昨日の午前中に30歳のバリバリ元気なお遍路をしている
アキさんに出会った。

彼は30日前にご両親の健康のためにこの道を歩み始めた。
お母さんは、ガンの手術を受けていま回復中で、
お父さんは、これから心臓の手術を受けると僕に説明した。

このまだ30歳の男性は、なんと自分の体でもって
自分を産んでくれた二人のために結構ハードな道を選んだ。
実に感動した。

「あなたのような若い人が増えればいいのに」
と、僕は彼に伝えた。

当分一緒に歩こうということになった。
山に入ったとたんに、大雨が降り始めた。

彼は、カッパを持っていたのだが
僕はそのまま濡れて行った。

すぐ乾燥すると思った。
そしてとてもあり難い涼しさだった。

次のお寺に到着すると
彼は、ちょっとしたコメントをこぼした。

「この辺になるとお遍路さんのお金はよく取られる」
と僕に伝えてから5分後に
「財布がない」と大声で言った。

その財布に必要なすべてのお金と身分証明書などが
いっぱい入っていた。

このときこそあの筋力テストをやらないと・・・

“パーワーかフォースか”に書いてあるとおりに、
彼の右腕に僕の左手で圧力をかけて、そして彼が三角筋の
力で抵抗する、というテストだ。

 「財布はこの周辺にある」
  で、見事に力が抜けたので、彼の腕は下に引っ張られた。

 「ここ国分寺とここの間にある」
  で、しっかり抵抗が出来た。

 彼の財布はいままで歩いてきたどこかに落ちたはずだ。

私たちの話を聞いていたもう一人のお遍路さんは、
「ベンチの上に財布を見たよ」
と言って、その場所を説明してくれた。

確かに私たちが一時休憩した場所だった。
アキさんはさっそく逆戻りをした。

しかし、あとで携帯で連絡をすると
「なかった」と言ってアキさんの気持ちはものすごく
ダウンしてしまった。当分歩く気はしなかった。

よくあることと思われるが、最後の辺りに気を抜くという
ことについて彼が先ほどの
「このへんになるとお金をよく獲られる」
に関係していた。

あともうチョットだと思うと不注意になって絶対普段
やらないことをやってしまうのだ。

12時間を歩いた。
上の写真の宿は「貸しきりだった」
ぶっ倒れてあとは寝るだけだ。

今回のストーリーはハッピーエンドだった。
アキさんは警察署に電話を入れて、確かに
誰かが彼の財布を届けてくれていていたのだ。

僕は、82番札所の管理人に
「落とし物は大抵返ってきますか」と聞いたら、

「お寺内だったらほとんど返ってくるけど、
 外で落とすと返ってくる確立は少ない」

つまりお寺の敷地内に罪を犯すとものすごい
大変なバチが当たると大抵思われる。
しかし、山の中に落とし物を見つけると誰もみてないし
お寺でもないし、だからこそ貰っていいじゃないかと・・・

昨日は、いろんなハプニングがあった中で
とくに僕にとっては2つのポイントがあった。

1、お遍路をしながら、ものすごく言葉に注意を払わないと
  共時性はすぐに起こってしまう。
  アキさんは、お金がなくなる話の直後に実際に自分のお金がなくなった。
  
2、ほとんどの日本人は、正直だ。

このリポートは第83番札所一宮寺からだった。
順調に行けば、明日午後に最終の88番札所に到着する予定だ。


  


Posted by エハン at 10:06お遍路の日記