2008年03月01日

On the road again

On the road again

旅ばかりしている男を、誰が止めるのか。ヒッピーの中には、永遠に旅し続ける者もいる。
40代、50代でもオン・ザ・ロードの男たちだ。彼らは、いい意味で病気だね。大したものだし、
素晴らしいと思う。

しかし、彼らには最大の弱点がある。それは、自己中心的な生き方に陥りやすいということだ。
彼らが気にしているのは、自分のことだけだからだ。だから、人生の3Kのうち、関係性の問題で
行き詰ってしまう。下手すると、きわめて自己中心的な人間になってしまうのだ。そういう人を、
僕は何人も見てきた。

で、僕の場合はどうだったか? 旅の目的も人生も一気にチェンジさせたのは、素敵な日本の
女性だった。出会った場所は、バンクーバーのアメリカ大使館。ビザ申請の列に並んでいたその
女性を見た途端、目が吸い寄せられるように惹かれた。話しかけてみると、大阪出身だという。

バークリー大学に入るためにビザが必要で待っているというのだ。当時、アメリカ政府は、東洋人
の女性が入国することを警戒していた。不法滞在者になるのではないかと恐れていたのだ。

僕は、「じゃあサンフランシスコまで一緒に旅しませんか?」
と持ちかけた。彼女自身、10代から外国旅行をしてきた経験もあったし、物怖じしない性格
だった。知的好奇心も高くて、その方向も僕と一致していた。単なるロマンスじゃないと直観した。
一緒にクリシュナムルティの講演にも行ったね。そのときのことは、よく覚
えている。当時、彼は75歳だったけれど、とてもきちんとした格好をして、イギリスの紳士のよう
に舞台に立っていた。彼は、生涯にわたって、自ら以外には権威を求めないことが、真実の探求
の始まりだと言い続けた人だ。

On the road again

講演の最後、「進歩と暴力の関係について知りたい」という質問に答えた彼の言葉が忘れられ
ない。彼は言った。「progress(進歩)の語源は、たくさんの武器を持って敵の基地を攻撃すると
いう意味なんですよ」それだけ告げて、彼は舞台の袖に消えた。あの人は、本物の先生だったなあ
と思う。

結局、僕とこの素敵な女性は、サンフランシスコまでのはずが、さらにメキシコまで一緒に行くこと
になった。バークリーに入学するのは、いくつもの困難があったのだ。

メキシコに入ると、僕は荷物の多い女性と二人で旅することにストレスを感じ始めていた。
彼女もメキシコの雰囲気が気に入らないと言い出した。

「じゃ、別れましょう。僕は独りで行く」
「私はバークリーに再挑戦する」

これで元の形に戻った。僕は南米。彼女はサンフランシスコの友だちのアパート。まったく逆方向
に別れたかに見えた。正直な話、彼女と別れてかなりホッとしていた。

だけど、やはり女性のパワーというものは侮れない。僕の頭の中に、〝そろそろこんなこと続けな
くてもいいんじゃない? 女性と暮らすほうがいいんじゃない?〟という声が聞こえてきた。

旅の魅力が薄れてきていた。で、Uターンでしょ、こうなったら。

サンフランシスコのアパートで、僕の悪口を言ってたところに、「ただいま」と言って帰ってきた。
それから33年間、僕は妻ソニアと一緒に生活することになる。

もし、彼女に出会わなかったら・・・・おそらくずっとオン・ザ・ロードの生き方をしていたかもしれ
ないね。


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Posted by エハン at 11:22 │Autobiography