2007年12月05日

The number 23

The number 23

ともかく、僕は霊山寺でお遍路グッズを買っている人たちを尻目に、さっさとリュックを担いで歩き
出した。僕はお遍路の格好はしない。菅笠も白衣も着ない。金剛杖も持たない。持っているステッ
キは、富士山に登ったときから使い始めたもので、アンデスにも2回持っていった。決められた
スタイルというものには従わないのだ。


今日の予定は30キロ。スタートから出遅れた僕には時間がなかった。夕方までに宿に到着しな
ければいけない。お遍路は時間との戦いでもある。僕は独りで歩くことを原則にしていた。だって、
僕はハイキングしに来たわけじゃないし、誰かと競争しているわけでもない。自分のペースを保って
歩くことが大事なのだ。それに独りで歩くと、自分の心の汚れが、かなり明確に見えてくるからよい
のだね。

空からは真夏の日差しが降り注いでいた。超暑い。日に焼けて、すぐに顔が真っ赤になる。ほとん
ど赤鬼だ。それでバンダナを巻き、ひたすら歩く。歩くことに集中し、自分だけの祈りの言葉をひた
すら唱える。「maranatha」という言葉だ。今の聖書にはないけれど、古代から聖書の最後の言
葉として有名な祈りの言葉だ。

「キリスト意識がいまここにありますように」という意味だけれど、別にキリスト教の神に限ったわ
けじゃないんだ。マントラみたいなものだね。この祈りは短いからいい。何時間も唱えていると、
自分が捉われていた思い込みを捨てられる。例えばこんなことがあった。

23番札所に向かう前日、天気予報では台風情報がさかんに流されていた。「大変な暴風雨になる
見込みで、厳重な警戒が必要です」と、お天気お姉さんが真剣な表情で伝えてきた。でも、外を見
ても、僕にはそんなに危うい感じは持てなかった。

こういうとき、どうするか。民宿で一緒に泊まっていた親子のお遍路さんは、旅を中止することを選
択した。僕も少し迷ったけれど、こういうときこそ、「maranatha」だね。恐れとか不安とか、ネガテ
ィブな意識をクリーニングするのだ。

「よし、決めた。僕は行く」
 
23という数字は僕にとっては、特別な数字だ。『裸のランチ』を書いたウィリアム・バロウズも言って
いたけれど、23は神秘を引き起こすオカルトナンバーなのだ。これは、シリウスと関係が深い。
シリウスについて、また後で語るけれど、ともかく自分がつねに注目してきた番号なのだ。



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Posted by エハン at 10:45 │Autobiography