2006年05月18日

スーフィズムの世界の愚か者



ナスレッディン・ホジャの像

1973年にアフリカを一人で旅をしていた時の話です。大陸を縦断
しょうと思ってカイロ市からケープ・タウン市までに数ヶ月間、歩いたり
ヒッチハイクをしたりして、ずっと野宿の生活をしました。唯一の友は
本でした。当時スーフィ教に関心があってそしてその伝統の代表の
一人は神秘主義者Georges Gurdjieffでした。

彼の本にたびたび登場するのは、愚かな男「ナスレッディン・ホジャ」の引用でした。
本当はその男はスーフィのマスターでした。しかし人間の愚かさを表現することによって
人々に中近東の叡智を伝道するこたが出来ると云うことですね。

ナスレッディンは行く先々でトラブルと笑いを巻き起こす陽気なキャラクターです。
昔からずっとイスラム圏の人々から深く愛されています。
そしてこのナスレッディンのとんちに満ちた本が今もたくさん残っています。
日本の 一休さんや吉四六さんなどにも通ずるところがあります。

ホジャとはもともと、「先生」とか「老師」みたいな意味だそうです。
ターバンを巻いてロバに乗ったインテリふうの好々爺[こうこうや](おじいさん)は、
知恵者で皮肉屋だけど、みょうに抜けてる所もあって非常に面白いおっちゃんです。
その姿を頭に描いてこれから紹介する
ナスレッディン・ホジャ物語」から選んだ、あるエピソードをお読みください。

近所の人がホジャに忠告した。
「今、あなたの奥さんがウチに来ているのですが、
何でも最近は、近所のお宅をのきなみ渡り歩いてるそうじゃないですか。
少しは自分の家に帰るよう、話して頂けませんか?」
 
それを聞いて、ホジャはちょっと意外そうに応えた。
「そうかのぅ……それが本当なら、ウチにも訪ねてくるハズなのじゃが……
まぁ、そのうち来るかもしれんから、
その時によく言って聞かせておくよ。アイツの顔を覚えておったらな」  


Posted by エハン at 09:30ユーモア